イタリアで飲んだリモンチェッロは激甘だった!
2019年に、イタリアはフィレンツェを旅した。
イタリアならではの酒のひとつにレモンのお酒「リモンチェッロ(またはレモンチェッロ)」があると知っていた私は、それを飲まずには帰れないと思い、レモンの産地でもないフィレンツェのとあるバール(カフェ)で「リモンチェッロをくださいな」と注文をした。
そのときバールのおじさんはちょっと意外な顔をした。実際、私はリモンチェッロが何であるかよくわかっていない状態で、真昼間にそれを所望したのだ。


ひと口飲んで衝撃を受けた。


甘っだるい。。なんだこれ。
レモン=すっぱいと思っている私。これはまったく酸味がなく、色は薄い黄色であるものの、甘味しか感じない。まぁ香りはレモンかもしれないが…。まぁまぁ高い飲み物でなかったら残して去るが、日本円にして1000円を優に超えるのでワイングラスに大量に注がれていたのをグビグビ飲む。
それにしてもリモンチェッロとは、レモンの何で作っているのか?
あとでそれがアルコール度数30%以上もする、甘い食後酒であることを知る。
あっという間に酔っ払い、視界が軽く回転し始めた。


その後、フィレンツェのミケランジェロ広場近くにあるローズガーデンを千鳥足で歩いた。
どれもこれも良い思い出であるが、それにしてもイタリア人は何という甘党であることか。
- 朝食はペストリーが基本(ケーキなどの焼き菓子、チョコペーストがけ、甘いパンなど)
- エスプレッソに砂糖を入れる(バールのイタリア人男性に「砂糖を入れて飲むんだよ」と指南され、甘くして飲むことをすすめられた。ウマイけど…次回からブラックに変更)
- ジェラートはどれもやたら甘い。どうにかしてくれ…
糖尿病まっしぐらの食生活だと思われる。申し訳ないが、天野川の味覚にはあまりマッチしなかった。
かつてフィレンツェに住んでいた日本人女性にこのことを話したら、「そうそう!イタリア人は甘党だね。オレンジジュースが『苦い!』とか言って、砂糖を入れて飲んでいた男性がいたわ。どれも甘いよね」と。彼らは酸味や苦みが苦手なのかもしれない。
イタリア在住の別の方の話では、「イタリアではレモンをよく料理などに使いますが、果汁ではなく皮をよく使うんです」とのこと。日本の柚子のような扱いなのだろうか。
私はレモンが好き。香り高く甘酸っぱいのが好き。甘いだけの酒は苦手。でもリモンチェッロを作りたい。
その願望は、国産無農薬レモンを大量購入すること2回目、レモンジャム、レモン酢、レモン塩、冷凍レモンキューブ(レモン水用ミキサー冷凍)などひと通りを経て、ふとリモンチェッロの肩透かしを思い出し、私の手作り熱に火をつけた。
リベンジだ。
蜂蜜リモンチェッロをつくるために
リモンチェッロとは
リモンチェッロは南イタリア名産のレモンを使ったリキュールで、この黄色はレモンの皮の色。材料はレモンの皮、砂糖、95%以上のアルコール、水のみ。つまり、果汁は入っていない。
ヨーロッパを旅する人々が南伊のこの美しい飲み物に惚れ、紹介して有名になったらしい。
リモンチェッロを日本で買うと、2000円@500mLほど。
食後酒というから、甘くて冷たいデザート酒ということだろう。アルコール度数30度もするのだが、ストレートで飲むのがスタンダード。リキュールグラスでひと口、クイッと一気飲みのイメージだ。
ちなみに、リキュールグラスは30~45mLしか入らない小さいグラスのこと。間違ってもワイングラスでグビグビ飲まないように。

砂糖の代わりに蜂蜜で作る
さて、甘味料は何を使うか。普通の砂糖でもグラニュー糖でもいいが、私は精製された砂糖や人工甘味料を極力排除した生活に切り替えたので、どちらもNG。
キビ糖や甜菜糖の類もあるが、それだとキレイな色が出ない可能性がある。
というわけで、風邪予防にもなり、身体によい蜂蜜を選んだ。もちろんレモンとの相性はいいはずだ。
問題は「はちみつと砂糖では同重量でも甘さが異なってくる」ということ。蜂蜜のほうが甘いのだ。


蜂蜜は砂糖の重量の7-8割で換算する。
使用量が多い場合は5割から様子を見て試す必要がある。
グラム換算例:蜂蜜 10g=上白糖(グラニュー糖) 13g
今回はグラムですべて作っていく。というわけで甘さ控えめを目指すため、砂糖の最低必要量に対し8割の蜂蜜で作ることにした。もし普通の砂糖で作りたい方は、下記蜂蜜の分量から1.2倍換算してほしい。
訳あり国産無農薬レモンを選ぶ
国内でノーワックス・無農薬のレモンを普通に購入できる時代になった。
私はいつもネット通販で「訳あり」の国産の残留農薬ゼロのレモン2kgを購入している。見た目がいただけないぶん、割安だからだ。通常のレモンは1個100gくらいだから、20個ほど入っている計算だ。@100円だとすると、スーパーで買う必要もなかろう。
こちらは無農薬というよりも、残留が試験でゼロという類だったと思う。
買ってみてわかったのは、スレ、キズ、アタリなどがあるが、ちょっとその部分を削れば、下の白い部分にすら傷みがないこと。もうこれで十分だと判断している。
聞くところによると、レモンの木にはトゲがあって、すぐに果実にキズがいってしまうので、きれいなものは少数なのだとか。とすると、これらのキズの類は通常のものであるし、全く問題ないということでもある。
今回はリモンチェッロなので皮こそすべてのはずだが、これで十分である。
なお、ヘタ以外は可食部である。


リモンチェッロづくりには皮を大量に使うわけだが、残ったものはどうやって処理すべきか悩む人もいると思う。
果汁は絞って冷凍キュービックがオススメ。皮の活用法、レモンの皮の栄養や効果に関し、詳細は下記参照のこと。
ホワイトリカーではなく「スピリタス」
95%以上のアルコール度数のものを使用するのだが、日本で購入する際、ウォッカベースの「スピリタス」以外は手に入りにくいようだ。
スピリタスといえば、口から火を吹く芸の時に使うことで有名なアルコール。95%以上のアルコール度数だと、ほかで使いづらいとか考えるのだろうか、スピリタスではなく、ホワイトリカーで代用しようという人も多い。
しかし、ホワイトリカーはオススメしない。抽出力が弱いからうまくいかない。
95%以上のアルコール濃度だと、1~3日漬け込むだけでOK。漬け込み4日以上だと歓迎しない成分まで抽出してしまい、味が劣ると科学的に調べたイタリアの学者の話を聞いたため、私は科学者の研究成果を信じて2-3日で済ます。
なお、これだけ抽出力が高いので、イタリアではほかの果実酒にも使っている。あっという間にできるので、嫌がらずにスピリタスでやってみよう。後日、水で薄めるので、実は割高でもない?


グラム換算:アルコール100mL=125g
レシピ:蜂蜜リモンチェッロ
レモン9個分の皮がたったの120gだった。意外とレモンはたくさん必要だ。
レモンの皮とアルコールの量比は勝手にアレンジしないこと。レモンの皮の量で作れる最大量を導き出した。
カップ計量ではなく、すべてスケールでグラム計量している。
【計算の仕方】


レモンの皮の量は、アルコール100gに対し40gが定量。
今回は120gとれたので、アルコールは3倍にすればよい。アルコール量:100g×3=300g


砂糖はアルコールの50%以上が定量。
最低150g必要だが、蜂蜜換算80%、水も増やしたので少しプラスして125gとした。経験上、砂糖を減らしすぎるのは保存上よくないと判断。


水はアルコールと同量以上が定量。
アルコール度数が高すぎないよう、多めにしている。
【材料】
- レモンの皮:120 g
- アルコール(96度のスピリタス):300 g
- 水:500 g
- 蜂蜜:125 g
水と砂糖はお好みで調整可能。
私の場合は、甘さ控えめにし、レモン氷を入れて甘酸っぱくして飲んでみようという野望があるので、勘でこの量にしてみる。
【必要な道具】
- ガラス製の保存瓶:アルコール抽出時の瓶。煮沸消毒できるものがベター。WECKやル・パルフェなどの海外製品も持っているが、メイドイン・ジャパンの密閉瓶を使用してみた。日本製はやはり細部がすごくいい。使い勝手が。
- スケール
- 空き瓶:出来上がりを入れる瓶。アルコールの倍以上の量が入るもの。少量のウォッカなどで内部を消毒。口(蓋)が錆びない瓶だと安心。
- ザル:皮をこす
- じょうご(ロート):瓶に入れるときに使用。これも消毒したいので、ステンレス製がよい
手順
1. 保存瓶を消毒する:熱湯+少量のスピリタスで注ぐとより殺菌効果あり
2. レモンを洗う:キレイなスポンジで軽くこすり洗い
3. レモンの皮を剥く:計量し、他の分量を決める。苦みのもとである白いわた部分が入らないようにピーラーなどで皮を薄く剥くのがコツ
4. レモンの皮を瓶に入れる
5. 瓶にアルコールの必要量を注ぐ:スケールの上に瓶を置き、0値にして必要量を計量しながら慎重に注ぐ。アルコール濃度が高いので火気厳禁。
6. 蓋をして冷暗所保存:1~3日。比較写真はこちら。




7. 熱した水に蜂蜜を入れ、シロップを作る:冷ましておく
8. 6から皮を取り出し(ザルなどでこす)、冷ましたシロップを追加する:混ぜたら白濁する


9. 味見をする
当初アルコール度数37%をつくって味見した。アルコールがキツすぎて無理だった。甘味も足りなかったので、水と蜂蜜を足し、31%に変更。最初は味がとんがっている。
10. 1週間冷暗所に置いてなじませたら出来上がり
リモンチェッロが分離した、いや泡立った


シロップと混ぜた翌日、ビールみたいになっていた。上の白い上澄みができており、明らかに分離している。
いろいろ調べてみて、原因はコレかなという文章を見つけた。オーガニックにこだわったイタリア製リモンチェッロの注意書きより:「添加物を使用していないため、レモンのオイル分が分離する場合がありますが、品質には影響がありません」
ということは、白い分離部分はレモンオイルということになる。試しになめてみた。
んー、舌にピリリとする。きっとレモンのエッセンシャルオイルをなめたらこんな感じかも。レモンの皮を剥くとき、顔を近づけたら結構刺激的だが、それを舌で味わう感じ。
正直、不安な味である。お世辞にも「うめぇ」ではないのだから。ここからどんな成長をするのか?昨日よりマシな味になっている気がした。おとなしく待とう。
なお、アルコール度数の低いリカーで漬け込むと、シロップを入れても白濁しないという話である。これは抽出がうまくいっていない証拠。上記の話とは異なるので、やはりアルコール度数は気を付けたい。


そして、待てない私は3日目に若干白い上澄みが減っているのを確認して、レモン汁氷を足して味見してしまう。


するとどうだろう、ストレートだと洗剤のエキスかというような印象が、酸味が加わっただけで苦みと香りが引き立ち、美味しくなったではないか!いけるぞ!レモン果汁はスゴイな。
最終的には、分離は1mmほどに減った。そして味も落ち着き、おいしくなった。


追記 泡立ち
リモンチェッロを手作りして2度目のこと。
シロップづくりをしていたら、沸騰した段階でアルコールと混ぜていないうちから泡立ちを確認した。
もしかして、アルコールレモンと混ぜると、余計に泡立つ?
ということで、混ぜて白濁後、瓶に入れたらその泡立ちは際立っていた。もう泡祭。
恐らく、はちみつで作ると余計に泡立ちがあり、落ち着くまで時間がかかるということだろう。


リモンチェッロの飲み方
1週間経って飲んでみた。結局…甘酸っぱくないリモンチェッロは、あまり私の好みではなかった。が、見た目は美しい。
ならば、30%くらいのレモン果汁氷で割って飲むことにした。
これが一番いい感じ。ただの「蜂蜜レモン酒」ということになろうか。美味しいから、合格。特に、脂っこいものを食べた後に飲みたくなる。
なんだかんだ言って、リモンチェッロを飲み切ると、さみしくなってまた作ってしまった。
毎晩〆に甘酸っぱいリモンチェッロを味わうのが習慣化してしまい、待ち遠しくなった。


レモンの皮は体にいいからね。
そうこうしているうちに、「夜はちみつダイエット」なるものを知る。
なんでも、寝る1時間くらい前に大さじ1杯のはちみつを摂ると、ぐっすり眠れて、抗酸化にすぐれ、美容によくて、ダイエットにもなるという。
よく眠れるという理由は、妙齢の方々が夜間低血糖で目が覚めやすくなってしまうところ、適度な糖質を与えることでスッと眠りに入れるからだそうだ。


夜はちみつダイエットを兼ねて、寝る前のリモンチェッロを習慣にすればいいのかな。


アルコールはほどほどだってさ。


この器、なかなかオシャレで気に入っている。
ボダムのエスプレッソ用ダブルウォールグラス。熱湯、電子レンジ、オーブン、いずれもOKの職人手作り。なんでもいいが、ガラスが良かった。美しさを最も引き立てるのはガラス製の小さい器である。
リモンチェッロに酸味はない
それにしても、いろいろブログを見てみたが、困ったことに酸味がどうとか書いているのは、実際に作ったことがないうえに、飲んだこともない人か、アレンジのリモンチェッロをホンモノと信じている人の可能性が高い。
果汁は入れないのだから、酸っぱいわけがあるまい。
また、イタリア旅行中にバニラアイスにリモンチェッロをかけたのが出てきて、甘酸っぱくて美味しかったというコメントを読んで、これも「レモン果汁入りの何かだろう」と予想。
まぁ、リモンチェッロにレモン果汁をプラスして、バニラアイスにかけて食べたら確かに美味しそうだ。
保存
冷蔵庫か冷凍庫で保存。アルコール度数が高いため、冷凍庫でも凍らない。しかし、冷凍OKの瓶は見たことがない。
なお、レモン汁は飲むときに混ぜるのがよい。レモン汁キュービックの出番。
グリーンレモンの皮は使えない?
グリーンレモン、つまり熟していない早生状態のレモンの皮は要注意である。
なぜなら、黄色よりも青臭く、固く、苦い傾向にあり、リンゴ酢に漬け込んでも、蜂蜜レモンにしても、皮はまるで歯が立たず、青臭くて食べるのには適さないと感じている。
できれば、剥いてリモンチェッロか何かに使用するのがオススメ。


みかんの皮で「みかんチェッロ」
今回はレモンの皮を使用してリモンチェッロをつくったが、このやり方を応用して、柑橘類の皮で自家製チェッロができる。ただし、無農薬に限る。みかんの皮でつくる「みかんチェッロ」、夏みかんなどでつくる「アランチェッロ」など、柑橘ならなんでもOK。
なお、アルコール度数を下げてもできないことはないが、ホワイトリカーの作り方を見ていると、一度皮をカラカラに乾かしてからアルコール漬けにするとか、面倒なレシピが多い。アルコール度数が低いと、抽出力が劣るし、腐敗も心配である。
リモンチェッロづくりを理解していれば、そのまま皮を1~3日間96%アルコールにつければOKということがわかっていただけるはず。


こちらは、みかんの皮をピーラーで剥いて、スピリタス96%アルコールで1日抽出したもの。
これをシロップを加えて3倍に薄めれば、白濁したみかんチェッロができる。
シロップではなく、水で薄めれば育毛剤になる。効くのかどうかはよくわからない…が、美しいね。

